この記事はこんな人に向けて書いたものです。
高齢出産にリスクがあることはほとんどの人が知っています。
しかし、それでも赤ちゃんを産みたいと考える人も多いと思います。
元気な赤ちゃんを産むためには高齢出産のリスクを正しく理解することが重要です。
実際に赤ちゃんが生まれてから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、高齢出産にどのようなリスクがあるのか理解しておく必要があります。
この記事を読んでいただければ、高齢出産のリスクが明確となり、疑問や不安が解消できるはずです。
ぜひ最後までご覧ください。
高齢出産のリスク①:母体へのリスク(妊娠中)
高齢出産における妊娠中の母体へのリスクとして以下の5点があります。
妊娠中の母体へのリスク①:流産
流産の確率は平均で約15%といわれています。
年齢別でみると20代で10%強、30~34歳で約15%、35~39歳で約25%、40~44歳で約50%と、
出産年齢が高くなるほど流産の確率は高くなります。
流産の原因はさまざまですが、妊娠初期の流産は受精卵の染色体異常によるものがほとんどです。
卵子は年齢を重ねるごとに少しずつ老化していきます。
老化した卵子は染色体異常が起こりやすく、そのため高齢出産は妊娠が成立しても流産する確率が高くなると考えられています。
妊娠中の母体へのリスク②:早産
出産年齢が高くなるほど早産の確率が高くなります。
その原因は、年齢が高くなるほど妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症を発症する確率が高くなるためと考えられています。
妊娠中の母体へのリスク③:妊娠高血圧症候群
妊娠20週~産後12週の間に高血圧を発症した状態を妊娠高血圧症候群といいます。
昔は妊娠中毒症と呼ばれていました。
妊娠中は血液量の増加や子宮が大きくなることで腎臓への負担が増え、高血圧を発症しやすくなります。
妊娠高血圧症候群の発症頻度は40歳以上で約8%とされ、35歳未満の約2倍となっています。
次のような方たちが妊娠高血圧症候群を発症しやすいといわれています。
妊娠中の母体へのリスク④:妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠中に発症した軽い糖の代謝異常のことです。
妊娠中は通常より食後の血糖値が高めになる機能が働きます。
この機能が高めに働いて食後の血糖値が上がりすぎた状態が妊娠糖尿病です。
多くの場合、妊娠が終わると糖尿病の症状は治まり、正常な状態に戻ります。
次のような方たちが妊娠糖尿病を発症しやすいといわれています。
ちなみに、すでに糖尿病になっている人が妊娠した場合は糖尿病合併妊娠と呼ばれ、妊娠糖尿病とは異なります。
妊娠中の母体へのリスク⑤:多胎妊娠
不妊治療などで排卵誘発剤を使うと、双子を妊娠する確率が高くなります。
これは、排卵誘発剤が女性ホルモンに働きかけて排卵を誘発する作用があり、一度に複数の卵子が排卵されることがあるためです。
また、昔は体外受精や顕微授精も双子を妊娠する確率が高くなるといわれていました。
理由は、高齢女性は妊娠の確率が低いことから、複数個の胚を移植することが多かったためです。
現在では移植胚数を原則1個とする日本産科婦人科学界の会告により、多胎妊娠は減少してきています。
高齢出産のリスク②:母体へのリスク(分娩時)
高齢出産における分娩時の母体へのリスクとして以下の3点があります。
分娩時の母体へのリスク①:難産
高齢出産は難産になりやすいといわれています。
その原因は、本来であれば軟らかくなるはずの母体の一部が、加齢によって軟らかくなりにくくなっているからです。
出産日が近づいてくると、赤ちゃんが産まれやすくするために、通常は子宮の下にある子宮頸部が少しずつ軟らかくなります。
しかし、年齢が高くなると、子宮頸部が軟らかくなるまでに時間がかかる場合があります。
そのほか高齢出産では、産道の一部である軟産道が広がりにくくなる軟産道強靭症や微弱陣痛なども発症しやすく、これも難産の原因となります。
分娩時の母体へのリスク②:帝王切開
出産する年齢が高くなるほど帝王切開の確率が高くなるといわれています。
初産婦における帝王切開の確率は、30~40歳で28%、40~44歳で43%、45歳以上で54%と、年齢が高くなるにつれて上昇します。
その原因の一つが前置胎盤です。
前置胎盤とは、胎盤が子宮口を覆ってしまう状態になることで、35歳以上の妊娠では30歳未満に比べて2倍多いというデータもあります。
前置胎盤であることが確定すると、帝王切開を行うことになります。
その他、常位胎盤早期剥離などの妊娠合併症や子宮筋腫などの妊娠偶発合併症が発症しやすくなることも、帝王切開の確率が高くなる原因と考えられています。
分娩時の母体へのリスク③:妊産婦死亡
高齢出産では妊産婦の死亡率が高くなるといわれています。
その率は、20代で2~3%、30代で4~7%、40代以上で約11%と年齢があがるほど高くなっています。
その原因は、偶発合併症の増加、前置胎盤や常位胎盤早期剥離の増加、帝王切開の増加に伴う胚塞栓症の増加などが考えられています。
高齢出産のリスク③:赤ちゃんへのリスク
高齢出産における赤ちゃんへのリスクとして以下の2点があります。
赤ちゃんへのリスク①:ダウン症などの染色体異常
出産高齢が高くなると染色体異常、特に常染色体トリソミーが増加するといわれています。
なかでも、ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は20代で約0.1%、30代で約0.3%、40代で約1%と、年齢があがるにつれて増加します。
高齢出産で染色体異常が増加するのは、卵子や精子の老化が原因と考えられています。
染色体異常が心配な方は、出生前診断を受診を検討してみてはいかがでしょうか。
赤ちゃんへのリスク②:低出生体重児
高齢出産では低出生体重児が産まれる確率が高くなるといわれています。
その原因は、妊娠高血圧症候群や子宮筋腫などの合併症の発症が増加するためと考えられています。
合併症を発症すると子宮内胎児発育不全や早産が起こりやすくなり、その結果、生まれてくる赤ちゃんが低出生体重児になってしまいます。
また、高齢出産は糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病の確率が高くなることから、巨大児が多くなるともいわれています。
高齢出産のリスクを軽減するために
これまでご紹介したように、高齢出産にはさまざまなリスクがあります。
そのリスクを少しでも軽減するために、自分でできる対策を5点ご紹介します。
高齢出産のリスク対策①:葉酸の摂取
葉酸は細胞の分裂や成熟に大きくかかわっています。
ママが葉酸を十分に摂取することで、赤ちゃんが脳や脊髄に異常が起こる神経管閉鎖障害になりにくくなります。
厚生労働省も、妊娠1か月以上前~妊娠3か月までに十分な葉酸を摂取することを推奨しています。
葉酸を含んでいる食べ物としては枝豆やほうれん草、アボカド、イチゴ、ブロッコリー、鶏レバーなどが挙げられます。
高齢出産のリスク対策②:栄養バランスのとれた食事
元気な赤ちゃんを産むためには栄養バランスを考えた食事をとることが大切です。
高齢出産で懸念される妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病は、もともと肥満ぎみの人や塩分・カロリーの多い食生活を送っている人などに発症しやすい傾向があります。
栄養バランスを考えて、塩分を控え、高タンパク・低カロリーにするなど食生活に気を配りましょう。
高齢出産のリスク対策③:適度な運動
妊婦さんの中には、体を大事にするあまり、あまり運動せずに家で静かに過ごしている方がいると聞きます。
お医者さんから安静にするように指示されていれば別ですが、そうでなければ適度に体を動かすことをおすすめします。
年齢が高くなると体の各部が硬くなり、難産しやすくなるといわれています。
無理のない範囲でマタニティヨガやストレッチなどを行い、骨盤まわりの筋力を鍛えて骨盤を広げておくことで難産予防になります。
高齢出産のリスク対策④:十分な睡眠
妊娠中に限らず、健全な生活を送るためには十分な睡眠をとることが大切です。
栄養バランスのとれた食事を心がけ、適度に体を動かし、十分な睡眠をとって、心も体もリフレッシュすることが大切です。
高齢出産のリスク対策⑤:お医者さんの指示に従う
元気な赤ちゃんを産むためには、お医者さんの協力が不可欠です。
高齢出産のさまざまなリスクをできるだけ軽減できるように、妊婦健診をしっかり受けて、母体と赤ちゃんの状況を細かく確認してもらうことが重要です。
これから妊活をしようと考えている方は、早めに病院を受診して、お医者さんと相談しながら妊活を進めていくことをおすすめします。
まとめ
高齢出産のリスクについてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。
最後に高齢出産のリスク対策をまとめると、
です。
高齢出産を考えている方の中には、妊活を長年続けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
リスクを正しく理解して、元気な赤ちゃんを授かれると良いですね。
この記事が、あなたの妊娠や出産に対する疑問や不安を解消するためにお役に立てば何よりです。
不安解消のために出生前診断をお考えの方は、一度プロに相談してみてはいかがでしょうか。
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